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連珠文化の研究

連珠および盤上ゲーム、棋具などの歴史や、研究、論文・論評などを集めました。

●盤上遊戯 ― 囲碁散歩(20)〜(26) 

天地シニアネットワーク機関紙「ネットワークテーブル」より
■小俣光夫・著


読みやすいように改行、マークなど変更・追加してあります。
記事をいろいろな理由から入手できなかったところがあります。
その部分は後日入手でき次第補填致します。御了承下さい。

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●□ 『ネットワーク テーブル』           天地シニアネットワーク
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盤上遊戯 ― 囲碁散歩 (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26)


◎ 盤上遊戯 ― 囲碁散歩 (20) ―   小俣光夫(65歳)[20]

・囲碁ゲームの起源(3)  博棊・博奕

 前回(19回)で
「孔子の論語にある棋あるいは、博奕という用語が囲碁(囲棋weiqi)を指していたという説は納得できます。」
と述べました。念のため論語の原典にあたってみました。

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 論語陽貨第十七、「子曰。飽食終日。無所用心。難矣哉。不有博奕者乎。為之猶賢乎巳」
(子曰、飽食終日心ヲ用イル所ナキハ難イカナ、博奕ナル者アラズヤ、之ヲ為スモ猶巳ムニ賢レリ)
 終日何を考ふるともなく暮らす人あり、厄介なる哉、碁将棊を為すも猶何をも為さざるよりも可、也と、
懶惰を戒むる也(矢野恒太「ポケット論語」)

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 「ポケット論語」では、博奕のことを碁・将棊と訳してありますが、正確には博戯(六博)と奕と訳すべきです。
奕は囲碁のことであろうというのが通説で、囲碁は3000年とか4000年の歴史があるされています。
しかし、孔子の時代に既に囲碁が行われていたかどうか、まだ論議があるようです。
最近それに疑問を呈する論文(「遊戯史研究14」)がでてきました。
当時はたして奕(注)が囲碁を意味するものかどうか疑わしいというものです。

 (注)”奕”の文字は下部が大ですが、廾(にじゅうあし)も使われていました。同じくエキと読みます。
後代、奕は囲碁の意味とされるようになりました。たとえば、奕棋(エキキ)は囲碁の意味と南北朝時代の文献にあります。

 囲碁を行っていた確実な証拠があるのは後漢の時代です。三国の時代には魏の曹植が囲碁を楽しんだという文献などがあり、
その他囲碁に関する逸話がいろいろあり実際に行われていたのは間違いないでしょう。
 紀元前後には囲碁はゲームとして確立していたようです。ただし、現代のタテヨコの罫線が19X19路の広い碁盤ではなく、
もっと狭いものでした。ちなみにチベットでは近年まで17x17路の碁盤を用いていました。
碁盤が狭くても面白さは同じです。
 9X9のいわゆる9路盤でも、ゲームとして奥が深く、黒(先手)がどれだけ有利か不明であり、
コミダシも5.5目か6.5目か決定していません。着手の変化は膨大ですので必勝定石などまだありません。(2002.12.6受付)
文献:「秦漢帝国時代における囲碁の普及発展の様相」大澤永弘 遊戯史研究14 2002.11



◎ 盤上遊戯 ― 囲碁散歩 (21) ―    小俣光夫(65歳)[21]

・囲碁ゲームの起源(4)  盤上ゲームの起源

 盤とコマを用いたゲームは世界各地にあり、それら起源の多くは不明です。
チンパンジーでも物を使って遊ぶことが観察されておりますので、恐らく人類が生まれた時から、なんらかのゲームは
存在したと考えられます。

 盤とコマでゲームを行った確実な証拠が古代エジプトの遺跡にいくつかあります。
その一つとして、紀元前25世紀の王の名称を表記したヒエログリフ(神聖文字)があり、その文字列のなかに
ゲーム盤とコマを意味する文字が含まれています。その文字は表音文字(メンと発音)として用いられていますが、
明らかにゲーム盤とコマを象っています。研究者によると、そのゲームはセネトといわれ、
古代から広く各地で遊ばれていたものとのこと。他に王女らしき女性がそのゲームを遊ぶ姿の壁画もあります。

 囲碁も盤とコマを用いるゲームであり、盤上に存在する石(コマ)の数や目(メまたはモク)で数える地(ジ)の広さを
争うゲームです。囲碁の原型は相当に古い起源を有するはずです。しかし、その本格的研究は始まったばかりの状況です。
囲碁に似たゲームは現在、各地で見出されていますが、それが囲碁の原型であったという調査研究結果はほとんどありません。

 上記古代エジプトのセネトは中国で盛んに行われていた六博(博)に似ていると思います。
両者ともにサイコロを用い、その出た目(メ:数値)に応じてコマを移動させるゲームで、
現在世界中にそれと類似のゲームは存在し遊ばれています。
それらはサイコロという運の要素を多分にもち、完全情報ゲームである囲碁の原型とはみなし難いのです。
参考文献:「図説 古代エジプト誌 ヒエログリフをひらく」松本弥 弥呂久 1995



盤上遊戯 ― 囲碁散歩 (22) ―    小俣光夫(65歳)[22]

  囲碁ゲームの起源(5)  サイコロまたは賽

「賽は投げられた」シーザーがローマのルビコン川を渡ったときの言です。運を天にまかしたという意味なのでしょう。
古来人は行動すべきたどうかの判断に迷うときクジを引いたり賽を投げて決断してきました。
御神籤はかって神聖な行為であったことでしょうが、最近では気軽な遊びの感覚でクジは引かれています。

 古代中国の遊戯である六博は棒状の賽を投げてその結果によってコマを動かし勝負を争いました。
現代のバックギャモンというゲームもサイコロのメによってコマを進行させるのですから、
明らかに六博と同類にあるといえます。

 ここで、サイコロと賽と用語を区分している理由にふれておきます。
サイコロは通常正6面体で、各面に1から6の数字を表記しています。古代には正6面体を簡単に制作する技術はなく、
動物の骨(くるぶし)などを利用していましたので必ずしも6面体ではありませんでした。
棒状や4面体などを含んだ広義のサイコロを賽と称してみます。
ちなみに、ぼくの子供の頃盛んに遊んだ、「まわり将棋」では、金将という駒(コマ)を4枚、賽として利用していました。
このコマは表のみに文字があり裏が無地ですから、4枚揃えて盤上に投げるとある確率で表裏それぞれの組合わせが現れ、
そのパターン(表2枚裏2枚が最頻度)に応じてコマを進めます。
この「まわり将棋」 と良く似た遊びが古代から現代にいたるまで世界各地に存在します。

 賽を使わない囲碁や将棋などは、実力のある者が勝者となるのが至当です。
ただし、実力が接近していると勝負を予測することが難しくなり、結果の予測は確率の問題となり、ギャンブルといわれる
競馬競輪と同じようなものです。 
近年にいたるまで囲碁や将棋で予測のつかない勝負は賭けの対象となっていました
(実態は勝負を楽しむためにスポンサーが金品を提供していたと思われます)。
日本では少なくなっていますが、韓国では日本の麻雀のように囲碁の勝負に金をかけることは珍しくないそうです。
指導する場合を除き勝敗の決まっているゲームは面白くないし、
勝者がなんらかの賞品を獲得することは自然のことなのでしょう。

 参考文献:「さいころ」増川宏一 法政大学出版局


◎ 盤上遊戯 ― 囲碁散歩 (23)―     小俣光夫(65歳)[23]

  囲碁ゲームの起源(6)  囲んでコマを捕る

 人間は太古から狩りをしてきました。素早く強い動物に対しては、一人では難しく、
多くの仲間(勢子ともいわれる)とともに取り囲み獲らえる方法がとられてきました。囲碁は包囲ゲームと分類されており、
あたかも狩りのように攻撃相手を取り巻き捉え取り除くことを目的とするゲームです。
限定された盤上に味方のコマ(石=棋子)をどれだけ多数存在させ、相手のコマをより少なくさせるかで勝負は決まります。
これは中国ルールでも日本ルールでも基本的に同じ結果になります。

 包囲ゲームの範疇で、手軽に遊べる「十六ムサシ」があります。
これは一つの強いコマがありそれを弱いコマが多数で取り囲み捉えるゲームで、日本では中世からすでに各地で遊ばれていた
ようで、恐らく外国から来たものを日本風に名付けたのでしょう。この種のゲームは広く世界各地にあり、ゲームやコマは
それぞれ民族風土に即した名称がつけられています。強いコマはトラ、オオカミなどと呼ばれ、包囲し勝敗を決める方法にも
いくつか異なったルールがあります。
これらのゲームではコマが線上を移動し、コマにも強弱があるなど、囲碁とは異質なところがあり、囲碁のルーツと見なすのは
無理があります。

 日本のハサミ将棋も一種の包囲ゲームでしょう。相手のコマを上下または左右にハサめば盤上からとり除きます。
囲碁は上下左右を取り囲めば盤上から取り上げることができますので、共通するところがないとはいえません。
また包囲ではありせんが、最古の盤上ゲームの一つである「ナインメンズモリス(Nine Mens Morris)」というゲームでは、
盤の罫線の交点にコマを交互に配置し、それが終わるとコマを移動させ、
直線上に味方のコマが3個並ぶと相手のコマを1個取り除きます。
盤上に味方のコマを多数残すことを目的とする点、囲碁と共通するところはありますが、コ
マの配置の後に移動があることから、囲碁のルーツとするにはやはり難しいと思います。

 要は囲碁ゲームには各種の基本的ルールが混在し合理的に集約されているので、
愛好者の多い伝統的ゲームになっているといえます。

参考文献:
・"Games to play" R.C.Bell Penguin Group 1988
・「ゲームの世界 ―知と遊びの博物館」
  F.V.グランフェルド 清水哲男訳編 日本ブリタニカ 1980


◎ 盤上遊戯 ― 囲碁散歩 (24)―     小俣光夫(65歳)  [24]

  囲碁ゲームの起源(7)  囲んでコマを捕る(続)

<お二人の方からメールでコメントをいただきました。>
・小生は、(日本の)囲碁は基本的には「陣取りゲーム」だと考えており、包囲するのはまず獲物(相手)ではなく自分の領域だと思います。
そして自分の領域にしたいと思っている所に相手が入り込もうとすれば、やむなく相手を排除する(殺す)という手段をとることもある、
というものなのではないでしょうか。 (A.Tさん)

・平本弥星6段の「囲碁の知・入門編」P88では「将棋は、最も進化した包囲ゲームといえるでしょう。包囲ゲームは・・・」とあり、
また囲碁については「碁も古代の包囲ゲームから生まれたという説(増川宏一『碁』)があります。けれど私は碁が包囲ゲームの一種で
あるとは思えません。石取りゲームを考えるとわかるように、碁は包囲ゲームとしては成り立たないのです。」例えば・・・といった様に続いて
います。そして植物的な生存ゲームで土地獲得の擬似ゲームではないかと結論付けています。私にはなかなか判断がつきませんが、
どれが最も説得力あるか今後がとても楽しみです。(T.Sさん)
     ----------------
 現在、囲碁のルールは中国ルールと日本ルールとで大別できます。日本流は「陣取りゲーム」でり、中国流は「生存している石(コマ)の
多寡を競うゲーム」といえます。どちらが囲碁の起源のルールに近いものかまだ未確定です。ぼくは中国ルールが近いのではないかと
推測してますが、その裏付けができません。
     ----------------
・現在の日本ルールの囲碁は起源のものからは変質していて、地を囲い合うゲームになっている、と了解していいのでしょうね? 
少なくとも日本ルールの囲碁では、相手の石を取るのはゲームの 本質的な目的ではなくて、あくまでも地を取り合う過程において
邪魔をする相手を排除するという副次的な手段にすぎないと考えるべきでしょうね。 (A.Tさん)
     ----------------
 そのとおりだと思います。ただし、日本で出版されている囲碁図書には、いかに地を囲うかということより、セメ、シノギ、アツミ、
スジとカタチ、サバキなど石(コマ)のせめぎ合いを述べているものの方がが多いようです。といって地を囲うことをなおざりにすると
負けてしまう。

 「碁は包囲ゲームとしては成り立たないのです。・・・そして植物的な生存ゲームで土地獲得の擬似ゲームではないか」との平本6段の
結論については次のように考えました。
 コマが生存可能なスペース獲得ゲームであるということであれば賛成できます。また、「ポンヌキゲームは習熟すると勝負がつかないので、
ゲームとして成り立たない」(平本6段)とのこと。しかし、ポンヌキルールを教えないと囲碁ゲームは成り立たないのも事実ですから、
囲碁の発生した時のルールにはポンヌキルールは存在していたはずです。
 このゲームの性格が植物的か動物的ということについては次回にふれてみます。

参考文献:「囲碁の知・入門編」平本弥星 集英社 新書 2001 


◎ 盤上遊戯 ― 囲碁散歩 (26)―     小俣光夫(65歳)[26]

  囲碁ゲームの起源(8)  

 囲碁では一旦打った(置いた)石は、取り除かれるまでは盤上に動かず存在します。
将棋のコマ(駒)はそれぞれの性能・ルールに従って盤上を移動します。
したがって囲碁は植物的であり、将棋は動物的であるとみなされます。
植物の生存目的は繁茂することでしょうから、中国ルールにおける生存する石が多くなる(繁茂する)こととは類似しています。

 将棋のことにふれてみましょう。世界各国に共通するルールは相手の王(王将、将軍、キング等)を
捉えるまたは殺すと勝ちとなります。世界に存在した、または現存する各種将棋の駒の性能(動き方)は実にさまざまです。
将棋のルーツは古代インドでプレイされたチャトランガといわれていますが、確実な証拠(考古学的遺物)はありません。
一方、古代中国にはサイコロを用いますが、将棋に似ているといえなくもない六博がありました。
このゲームは1個の将(梟主)に当たるコマと5個の部下に相当するコマとがあり、将をとられると負けとなるルールのようです。

 世界的に普及しているチェスはアラブ世界からイベリア半島を経由してヨーロッパにもたらされました。
アラブではクイーン(女王)は存在せず、それに相当するコマは司令官などと呼ばれ、キングより性能は乏しいものでした。
さらにチェスはアフリカから生まれたとの異説もあり、チェスの起源については現在盛んに研究されている状況です。
いずれにしても将棋は相対する両軍が戦う戦争シミュレーションゲームに分類され、コマの動きや勝負のつけ方からみると
動物的といえるでしょう。

 囲碁は植物的といっても、植物の生存競争は激しいものがあります。
ちょっとした空き地にも互いに領分を広げ、少しでも水分と太陽エネルギーを獲得し種を残そうとする闘いがみられます。
サンゴや食虫植物のように両者の境界にいるものもあり、生物の生存競争とみれば大きな差異はないのかもしれません。

 戦いのことに関心をもつと、武器の発達や戦争の歴史の図書資料が目につくようになりました。
人類は時代地域を問わずさまざまな武器と戦略・戦術を用い戦ってきました。
平和を唱えつつ戦争は果てしなく続くものなのでしょうか。



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